業務用エアコンが突然止まり、「ブレーカーが落ちた」「電源が入らない」とお困りではありませんか?
- 急に漏電ブレーカーが作動して冷房が止まった
- 修理業者を呼ぶ前に原因を少しでも知りたい
- 繰り返しブレーカーが落ちるが、本体が故障か判断できない
この記事では、業務用エアコンで漏電が起きる主な原因(配線の劣化・水の侵入・基板の故障など)と、安全な確認・対処の方法を解説します。
正しい手順を知ることで、感電や設備停止といった重大トラブルを防ぎ、安定した空調運用を維持できます。
業務用エアコンの漏電とは?仕組みとリスクを理解しよう
業務用エアコンの漏電は、空調設備のトラブルの中でも見過ごせない危険を伴う問題です。
漏電とは、本来は電気が流れるべき配線や部品の絶縁が弱まり、電気が外部へ流れてしまう状態を指します。これにより、感電や火災、機器の破損といったリスクが発生します。特に業務用エアコンは高電圧で長時間運転する機器であるため、漏電による被害が大きくなりがちです。
漏電が発生すると、まずブレーカー(漏電遮断器)が作動します。これは安全装置が「異常な電流の流れ」を検知して自動的に電源を遮断するためです。
つまり、ブレーカーが落ちた時点で「どこかで電気の漏れが起きている」というサインになります。
しかし、ブレーカーが落ちる=必ずしも本体故障とは限りません。
屋内配線・室外機・制御基板・コンプレッサーなど、漏電の原因は多岐にわたるため、原因を特定せずに再通電することは非常に危険です。
放置すると起こる二次トラブル
- 室外機や制御盤のショートによる火災リスク
- 運転停止による店舗・オフィスの営業停止
- 絶縁体の劣化による繰り返すブレーカー落ち
- 電力ロス・電気料金の増加
一時的に復旧しても、根本原因を解消しない限り再発することが多く、最悪の場合は圧縮機や基板の交換が必要になります。
そのため、次章では漏電を引き起こす代表的な原因を具体的に見ていきましょう。
業務用エアコンが漏電する主な原因
漏電は「電気の逃げ道」が生まれることによって起こります。業務用エアコンの構造上、配線・モーター・圧縮機・基板など電気部品が多く、さらに室外機が雨・風・湿気にさらされる環境にあるため、家庭用よりも漏電リスクが高い傾向があります。
ここでは、実際の現場でもよく見られる代表的な原因を5つ紹介します。
配線・電源コードの劣化や断線
もっとも多いのが、配線の経年劣化や断線による漏電です。特に屋外の配線は、紫外線・雨水・温度変化などで被覆(絶縁体)が劣化しやすく、そこから電気が外部へ漏れ出します。また、ネズミや昆虫がコードをかじることで断線・ショートするケースも多く報告されています。
チェックポイント
- 電源コードや配線の被覆が剥がれていないか
- ケーブル接続部にサビや黒焦げ跡がないか
このような異常がある場合は、配線交換や電気工事が必要です。
室外機や制御盤への水の侵入
業務用エアコンの室外機は常に外気にさらされるため、水分が漏電の直接原因になることがあります。雨風による浸水、清掃時の水のかけすぎ、結露の放置などが代表例です。特に夏場はドレン水や湿気の影響で基板や端子部が濡れやすく、これが通電不良やショートを招きます。
予防のポイント
- 室外機の周囲に水が溜まらないよう排水を確保する
- 高圧洗浄時は制御盤内部に水を入れない
- 防水カバーや雨除けを設置して湿気を抑制
コンプレッサーやモーターの故障
エアコンの心臓部であるコンプレッサー(圧縮機)やファンモーターが漏電の原因になることもあります。内部のコイルや絶縁体が劣化し、金属部分に電気が流れるとモーター焼損や過電流が発生します。一度焼損すると修理では対応できず、部品交換やユニット交換が必要です。
主な症状
- 起動時にブレーカーが落ちる
- モーターが異常に熱を持つ
- 室外機から異音(ジー、バチッ音)がする
アース線や接地工事の不備
漏電ブレーカーが正しく作動するためには、アース(接地)が欠かせません。アース線が切れていたり、接地抵抗値が規定値を超えている場合、漏電が発生してもブレーカーが作動せず、感電や火災の危険が高まります。また、アースを取っていないことで、軽度の漏電でも「誤作動」としてブレーカーが落ちるケースもあります。
定期的に電気工事士による接地測定を行い、接地抵抗値が基準内(概ね10Ω以下)か確認しておきましょう。
内部の汚れ・湿気による通電トラブル
意外と多いのが、内部のホコリやカビ、結露が電気を通してしまうパターンです。室内機・室外機の熱交換器や基板周辺に汚れが溜まると、そこに湿気が付着し、電流が本来のルート以外へ流れることがあります。特に飲食店など油分を含む空気環境では、ホコリ+油分で導電性が高まり、絶縁劣化が早まります。
月1回程度のフィルター清掃、年1回の分解洗浄を実施するだけでも、漏電防止に大きく貢献します。
ブレーカーが落ちたときの安全な確認・対処手順
漏電が起きた際、焦ってブレーカーを何度も上げ下げするのは危険です。
ここでは、安全を確保しながら漏電の有無を確認し、業者を呼ぶまでの応急的な手順を紹介します。
① まずは電源を完全にOFFにする
最初に行うべきことは、全てのブレーカーをOFFにして通電を止めることです。特に「主幹ブレーカー(漏電遮断器)」と「エアコン専用ブレーカー」は必ず切りましょう。通電したまま作業すると感電する恐れがあります。安全確認が取れたら、次のステップへ進みます。
② 漏電箇所を切り分けて確認する
ブレーカーを一つずつ入れ直し、どの系統でブレーカーが落ちるかを確認します。エアコンのブレーカーを入れた時にだけ落ちる場合は、空調設備が原因の可能性が高いです。
- 室内機の電源だけ切る
- 室外機側の電源だけ入れる
このように順番に確認することで、どの部分で漏電しているか特定しやすくなります。
修理・交換の費用相場と対応の流れ
漏電が見つかった場合、状況に応じて修理対応または部品交換・機器交換が必要になります。
ここでは、漏電箇所別の費用目安と、一般的な修理・交換の流れを解説します。
修理・交換の費用目安
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漏電箇所・内容 |
主な作業内容 |
費用目安(税込) |
特徴 |
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配線・電源コード |
絶縁処理・再配線工事 |
約2〜5万円 |
屋外劣化・断線が多い |
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室外機内部基板 |
基板交換・絶縁テスト |
約3〜8万円 |
水分侵入・熱劣化が原因 |
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コンプレッサー/モーター |
部品交換・冷媒再充填 |
約5〜10万円 |
高額修理・長期停止リスク |
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アース工事 |
接地工事・再測定 |
約1〜3万円 |
接地不良は再発防止に重要 |
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室外機ユニット交換 |
本体+工事 |
約20〜60万円 |
経年劣化・修理不能時に実施 |
このように、軽度の配線補修なら数万円で済みますが、モーターや基板交換になると10万円前後、室外機全体の交換では数十万円規模になることもあります。
業務停止を避けるためにも、早期発見・早期対応が最もコストを抑えるポイントです。
修理対応の基本フロー
- 現地調査・絶縁測定
電気工事士または空調専門業者が、テスターで絶縁抵抗を測定します。 - 漏電箇所の特定
室内機・室外機・制御盤など、電流の流れを分けて確認。 - 修理・部品交換作業
必要に応じて基板や配線を交換。アースも再点検します。 - 試運転・動作確認
ブレーカーが落ちずに安定運転できるかをチェック。 - 原因と再発防止策の説明
施工報告書をもとに、今後のメンテナンス方法を案内。
業務用エアコンの漏電を防ぐための予防メンテナンス
漏電トラブルを未然に防ぐためには、定期点検と環境管理が欠かせません。業務用エアコンは長時間運転が前提のため、少しの汚れや湿気が大きな故障に発展することがあります。
定期点検で確認すべきポイント
- 絶縁抵抗値(基準値1MΩ以上あるか)
- アース線の接続状態・腐食の有無
- 配線の被覆・コネクタの緩み
- 室外機・制御盤内部の結露や水の侵入跡
- フィルターや熱交換フィンの汚れ
年1回以上は専門業者による点検を実施することで、漏電・ショート・過電流といったトラブルを早期に防げます。
清掃・メンテナンスの重要性
内部の汚れやホコリが湿気を含むと、電気が予期せぬ経路を通ることがあります。
特に厨房や飲食店舗では、油煙が混ざったホコリが絶縁不良を引き起こすことも。
- フィルター清掃:月1回を目安に実施
- 室外機周辺の清掃:落ち葉やホコリを除去し、排水経路を確保
- 高圧洗浄:年1〜2回、専門業者に依頼
定期的な清掃は冷却効率を高めるだけでなく、電流漏れの発生率を大幅に下げる効果があります。
電気設備環境の見直しも効果的
- 分電盤やコンセントの増設を適正に行う
- 機器の電源を共有せず、専用ブレーカーを設ける
- 長期使用中の配線は更新スケジュールを立てる
設備全体の電気系統を見直すことで、漏電トラブルの根本的な発生源を断つことができます。
まとめ|漏電を防ぐには早期対応と定期点検がカギ
業務用エアコンの漏電は、配線の劣化や水分侵入など、ちょっとした環境要因からでも発生します。放置すると、ブレーカーの頻繁な遮断だけでなく、火災や感電、営業停止といった深刻な事態を招くこともあります。
早めに原因を特定し、必要に応じて修理・交換を行うことが、安全で効率的な空調運用につながります。また、日頃の点検と清掃を欠かさず行うことで、トラブルを未然に防ぎ、機器の寿命を延ばすことができます。
「頻繁に落ちる」「焦げ臭い」「雨天後に悪化」などのサインがある場合は、即日対応可能な専門業者へ“漏電の疑い”として点検を依頼しましょう。
早期対応で安全確保・営業停止リスクの最小化・修理費用の抑制につながります。

