「最近、業務用エアコンの効きが悪い」「冷房運転中なのに室内が暑いまま」そんな不調を感じていませんか?
その原因、もしかするとガス圧の異常かもしれません。
業務用エアコンは快適な空間づくりや業務効率の維持に欠かせない存在ですが、冷媒ガスの量が不足したり圧力が適切でなかったりすると、性能が大きく低下してしまいます。特に中小企業や店舗などでは、空調の不調が直接業務に支障をきたすケースもあるため、早めの対応が重要です。
この記事では、業務用エアコンのガス圧を測定する方法について、専門性を保ちながらも初心者でも理解しやすい形で詳しく解説していきます。マニホールドゲージの正しい使い方や適正圧力の見方、自分で点検すべきか業者に頼るべきかの判断基準まで、網羅的にカバーしています。
また、法的義務となるフロン排出抑制法にも触れながら、安全かつ正確なガス圧チェックのポイントもご紹介。記事の終盤では、点検や修理にかかるコストを抑える方法として「補助金」や「リース」を活用するメリットにも言及します。
冷えない、異音がする、異臭がする――これらの不具合の“見えない原因”を「ガス圧測定」で明らかにし、適切な対策へとつなげましょう。

業務用エアコンのガス圧とは?知っておきたい3つの基本
冷媒ガスとガス圧の関係とは
業務用エアコンにおける「ガス圧」とは、冷媒ガスが配管内を循環する際にかかる圧力のことを指します。この冷媒ガス(多くの場合はR410AやR32など)は、室内機と室外機を行き来しながら空気を冷やしたり温めたりする役割を果たしています。
ガス圧が適正でないと、冷媒の状態が本来のサイクルを保てなくなり、冷暖房能力が著しく低下します。たとえばガスが不足していると、気化熱を効率よく移動できず「冷えない」「ぬるい風しか出ない」といった症状が現れるのです。
ガス圧がエアコン性能に与える影響
ガス圧が低すぎれば冷媒量不足、つまり「ガス漏れ」が疑われます。一方、ガス圧が高すぎる場合は「過充填」や「室外機の冷却不足」が原因の可能性があり、コンプレッサーへ過剰な負担をかけてしまいます。
どちらの状態もエアコン本体の故障や電気代の増加を招くため、定期的にガス圧を測定することが非常に重要です。とくに業務用エアコンは使用時間や稼働環境が過酷であるため、家庭用以上にガス圧の管理が求められます。
業務用と家庭用の違いとは何か
家庭用エアコンと業務用エアコンの大きな違いは「法的点検義務の有無」と「冷媒ガスの量・圧力レンジ」です。
業務用エアコン(特にパッケージエアコンやビル用マルチエアコン)は、一定の出力を超えるとフロン排出抑制法に基づく定期点検が義務化されており、年に1回または3年に1回、ガス漏れなどを含む点検記録の提出が必要です。
また、冷媒の循環距離や室外機の容量が大きいため、使用されるガス圧も高めに設計されています。家庭用と同じ感覚で点検や補充を行うのは非常に危険であり、業務用ならではの知識が求められる分野です。
ガス圧測定が必要な5つのシグナル
冷房・暖房が効きにくい
「エアコンは動いているのに、冷暖房がほとんど効かない」――この症状は、多くの場合ガス圧の異常が関係しています。冷媒ガスが不足していると、室内機での熱交換がうまくいかず、設定温度に到達しなくなります。結果として、冷房はぬるく、暖房は弱く感じられるのです。
特に暑さ・寒さが厳しい時期には、空調効果の低下が業務環境に大きな支障をきたします。こうした場合には、早急なガス圧測定と診断が求められます。
配管や室外機に霜や結露がある
室外機や冷媒配管に異常な霜や結露が発生している場合、ガス圧の不具合の兆候です。冷媒ガスが適正に循環していないことで配管内の温度バランスが崩れ、過冷却状態となって霜が付きます。
この現象は、ガスの不足・圧力低下、あるいはバルブ不良などが原因で起きることが多く、放置するとコンプレッサー故障につながるため注意が必要です。
異音や異臭がする
「キーン」「ガラガラ」などの異音、あるいは「酸っぱいにおい」「焦げたようなにおい」がする場合も、ガス圧異常による冷媒の流れ不良や部品劣化が原因の可能性があります。異常音は、コンプレッサーや電動弁など機械部の負荷が増しているサインでもあります。
また冷媒ガスの一部は微臭性であり、ガス漏れ時に異臭を放つ場合もあるため、ニオイの変化にも敏感になってください。
点検の法的義務(フロン排出抑制法)
業務用エアコンの所有者には、フロン排出抑制法に基づく点検義務があります。出力7.5kW以上の機器は、1年または3年に1回の定期点検が必要で、その中にガス圧の確認や漏えい検査も含まれます。
点検を怠ると法令違反となり、事業者責任が問われる場合もあります。法対応としての「ガス圧測定」は、法的リスクの回避にも直結します。
定期点検と簡易点検の違い
点検には「定期点検」と「簡易点検」があり、それぞれ対象機器や点検内容が異なります。簡易点検では目視や音・温度の変化から異常の兆候を確認するのに対し、定期点検ではマニホールドゲージなどを用いた精密測定が求められます。
そのため、簡易点検で異常の兆候が見られた場合は、速やかにガス圧の測定を含む定期点検を行うことが重要です。
業務用エアコンのガス圧を正しく測定する4ステップ
業務用エアコンのガス圧を正しく測定するには、手順を守ることが非常に重要です。以下では、作業の流れを4つのステップに分けて丁寧に解説します。
Step1:冷房運転を確認し安定させる
ガス圧の測定は、エアコンが冷房運転中であることが前提です。これは冷媒ガスが循環し、圧力が安定した状態でないと正しい数値が出ないためです。
まず、リモコンで冷房モードを選択し、最低温度・最大風量で15〜20分ほど運転を行います。これにより、冷媒がしっかりと循環し、配管内の圧力が安定します。
Step2:サービスポートにマニホールドを接続
次に、マニホールドゲージを接続します。以下の手順で進めてください。
- エアコンの室外機側にある低圧側サービスポートのキャップを外します。
- 青色のチャージホース(低圧側)を、サービスポートにしっかりと接続。
- マニホールド本体のバルブは閉じた状態にしておくのが基本です。
※高圧側の接続は危険を伴うため、原則として業務用点検では低圧側のみで測定を行います。
Step3:低圧・高圧側の圧力を測定
マニホールドゲージのバルブをゆっくりと開け、冷媒ガスの圧力を測定します。
- 低圧側(吸入側):R410Aの場合であれば、0.9〜1.6MPa程度が目安です。
- 高圧側(吐出側):1.8〜2.6MPaが通常範囲ですが、冷媒種類や気温によって変動します。
冷房時の外気温や設置環境によって若干の上下がありますが、メーカーのマニュアルでの基準値と比較しながら確認するのが確実です。
Step4:測定後の取り外しと安全確認
圧力測定が完了したら、次のように安全に作業を終了します。
- ゲージのバルブを閉じ、チャージホースをゆっくりと取り外します。
- サービスポートのキャップを確実に閉めることで冷媒漏れを防止します。
- ゲージやホースに冷媒が残っていないか確認し、清掃して保管します。
作業後はエアコンを通常運転に戻し、風の温度や運転音に異常がないかをチェックしてください。
測定値の見方と判断ポイント|3つの異常サイン
業務用エアコンのガス圧を測定した後、重要なのはその数値が正常かどうかを正しく判断することです。ここでは、ガス圧の正常値と異常値の見方、診断ポイントを3つに分けて解説します。
正常なガス圧の目安(冷媒R32/R410A)
エアコンの冷媒には主にR410AまたはR32が使用されています。各冷媒ごとの冷房運転中の適正な低圧・高圧値は以下のとおりです。
冷媒 |
低圧側目安(MPa) |
高圧側目安(MPa) |
R410A |
0.9〜1.6 |
1.8〜2.6 |
R32 |
1.3〜1.7 |
2.3〜3.3 |
ただし、外気温や室温、機器の年数によって多少変動するため、機器の仕様書・メーカーの推奨値と照らし合わせて判断することが大切です。
圧力異常の具体例と原因
測定値が適正範囲から外れていた場合は、以下のような原因が考えられます。
- 低圧・高圧ともに低い:冷媒ガスの不足、すなわち「ガス漏れ」の可能性大。
- 低圧正常・高圧が高い:室外機の冷却不良、フィンの目詰まり、設置環境の問題。
- 低圧が高い・高圧が低い:冷媒の過充填、圧縮不良、バルブの不具合など。
これらの異常はエアコンの効きだけでなく、コンプレッサーの焼き付きや故障リスクにも直結します。数値を確認したら、異常パターンに基づいて迅速な対応を検討しましょう。
デジタル式ゲージの活用で見やすく正確に
最近では、アナログ式よりもデジタル式のマニホールドゲージが主流になりつつあります。デジタル式は以下のような利点があります。
- 数字で表示されるため誤読が少ない
- 自動で冷媒種別に合わせた換算表示が可能
- データを保存・印刷でき、点検記録に活用できる
業務用の定期点検やフロン排出抑制法の点検義務に対応するためにも、デジタル式を選ぶことで、より確実なガス圧管理が可能になります。

ガス圧が異常だったときの対処法と注意点
ガス圧の測定結果が正常範囲から外れていた場合、ただちに原因を把握し、適切な対応をとる必要があります。ここでは、自力対応と業者依頼の判断軸、補助金やリースを活用した対処法を解説します。
自力で補充する際のリスクと落とし穴
「ガス圧が低いなら補充すればいい」と考えるのは危険です。以下のようなリスクが存在します。
- 冷媒種類(R410A/R32など)を誤ると事故や機器破損の原因に
- 過充填によるコンプレッサーへの負荷増大
- フロン類は大気放出が法令違反となる可能性あり
- 気温・湿度・運転モードなど、補充の条件調整が難しい
特に業務用エアコンは冷媒の容量が大きく、補充作業にも高い技術と知識が必要です。誤った補充は、かえって修理費用を高騰させる要因となりかねません。
専門業者に依頼すべき理由とメリット
ガス圧異常が確認された際、信頼できる専門業者に点検や修理を依頼するのが最も安全で確実な方法です。具体的なメリットは以下のとおりです。
- 冷媒充填の国家資格(第一種・第二種冷媒フロン類取扱技術者)を有する技術者が対応
- 正確なガス圧測定・診断に加えて、漏えい箇所の特定や部品交換まで一貫対応
- フロン排出抑制法に則った点検記録の作成・管理が可能
- 高所作業や大型機器にも対応した安全装備・手順が整っている
業務用エアコンは法的にも管理責任が発生する設備のため、不適切な対応を避け、確実な修理が求められます。
点検・修理に使える補助金とリースの活用術
「点検や修理は費用がかさむから後回しに…」と悩む方には、補助金やリースの活用がおすすめです。
- 各自治体の中小企業向け設備更新補助金では、エアコンの点検や更新が対象となるケースあり
- リース契約なら初期費用ゼロでの最新エアコン導入が可能
- 補助金とリースを併用することで、実質コストを大幅に削減
アイドットコムのような専門業者では、補助金の申請サポートや最適なリースプランの提案も行っているため、費用面での不安がある場合はまず相談することをおすすめします。
まとめ ガス圧測定を点検ルーティンに取り入れる3つの理由
ガス圧の測定は「調子が悪いときだけ」行うものではありません。業務用エアコンを安全かつ長く使い続けるためには、定期的な測定と記録が非常に重要です。ここでは、点検ルーティンとしてガス圧測定を取り入れるべき理由を3つご紹介します。
早期トラブル発見で機器寿命を延ばす
冷媒ガスの漏れや圧力異常は、放置すればするほど機器への負荷が高まり、故障や寿命短縮につながります。定期的な測定で小さな異常を早期に察知できれば、修理費の削減や買い替えサイクルの延長にもつながります。
「まだ冷えるから大丈夫」と過信せず、予防保全の観点でガス圧測定を習慣化することが望まれます。
フロン排出抑制法に対応できる
業務用エアコンの所有者には、法令に基づいた定期点検義務が課されています。とくに冷媒が一定量以上使用されている機器は、1年または3年に1回の「定期点検」が必要です。
マニホールドゲージを用いたガス圧の測定は、この法的点検の中心的な項目となります。法令違反を避け、環境保全にも貢献するために、ルールに則った点検体制を整えることが企業の信頼性にもつながります。
補助金やリースで経費削減も可能
定期点検にはコストがかかるものの、各種補助金制度やリース活用によって、実質負担を抑えられるケースも少なくありません。老朽化した機器を定期点検し、必要に応じて更新することで、電気代の節約や業務効率の改善にもつながります。
さらに、アイドットコムのように「補助金×リース」の導入支援を行う企業なら、設備管理から資金面までワンストップでサポートを受けることができます。
